大判例

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札幌高等裁判所 昭和62年(う)120号 判決

本件記録中の関係証拠によれば,被告人は,村田和代と共謀のうえ,昭和61年9月中旬ころから同62年5月15日までの間,函館市松風町9番9号所在のフアシヨンサロンクリスタルにおいて,店のホステスらが不特定の客を相手に売春するに際し,その情を知りながら,同店舗内の個室を使用させて,売春をおこなう場所を提供することを業としたこと,他方,被告人は,昭和60年6月23日に犯した暴行罪,昭和61年9月28日に犯した傷害罪の各罪により,同年12月10日函館地方裁判所において,懲役10月,執行猶予5年の刑に処する旨の判決をうけ,右判決は,本件犯行の継続途中である同月25日に確定したことが,それぞれ認められる。

ところが,原判決は,被告人に科した懲役刑の執行を猶予するにあたり,本件売春の場所提供を業とする罪は,「営業犯として包括的に一罪であるところ,右確定裁判のあつた罪とは,右裁判の確定した時点を基準とすれば,既に犯されていた一部について同時審判が可能であり,かつ同時審判がなされていれば刑法45条前段の併合罪の関係に立つものとして裁判されていたはずであるから,同条前段,後段の統一的解釈を図るとすれば,判示罪については包括的に一罪である関係上全体として右確定裁判のあつた罪と同条後段の併合罪の関係に立つものと考えられる。」と判示し,これを前記確定裁判のあつた罪のいわゆる余罪として取扱い,右懲役刑の執行を猶予するに当たり,被告人を保護観察に付さなかつたことが明らかである。

しかしながら,売春の場所提供の罪は,いわゆる営業犯として,犯覆継続して行われる所為の全体が包括的に一個の犯罪を構成するというべきであるから,同法45条の適用についても,その所為全体の終了時を基準とすべきである。営業犯として包括的一罪と評価すべき所為の一部が確定裁判を経た別罪と同時審判の可能性があつたことを理由に,刑法45条後段の併合罪関係を認める原判決の見解は,一個の犯罪のうち右確定裁判後に行われた所為の部分についてまでも,遡つて別罪と同時審判の可能性があつたことを擬制しようとするものであつて妥当ではなく,容れることができない(昭和39年7月9日最高裁第2小法廷決定・刑集18巻6号375頁,昭和35年2月16日東京高裁判決・高裁刑集13巻1号73頁参照)。

したがつて,本件の場合,前示のとおり,被告人は昭和61年9月中旬から売春の場所提供の所為を業として反覆継続し昭和62年5月15日にこれを終えたのであるから,同法45条の適用については,右犯行終了時を基準に判断すべきものであり,犯行開始後その終了前に,これと別罪の関係にある罪の確定裁判が存在するからといつて,両者が同条後段の併合罪の関係に立つことはない。原判決はこの点において刑法45条の解釈,適用を誤り,ひいては同法25条,25条の2第1項の解釈,適用を誤つて,確定した別罪の懲役刑の執行猶予期間内に犯した本件の罪につき懲役刑の執行を猶予しながら,被告人を右猶予の期間中保護観察に付さなかつた違法があり,右誤りは判決に影響を及ぼすことが明らかであるから,原判決は破棄を免れない。

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